に見《み》せ[#「せ」は底本では欠]てくれた。實《じつ》に‥‥」と、感情的《かんじやうてき》な高岡軍曹《たかをかぐんそう》は躍氣《やつき》となつて中根《なかね》を賞讃《しやうさん》した。そして、興奮《こうふん》した眼《め》に涙《なみだ》を溜《た》めてゐた。「貴樣達《きさまたち》はあの時《とき》の中根《なかね》の行爲《かうゐ》を笑《わら》つたかも知《し》れん。然《しか》し、中根《なかね》は正《まさ》しく軍人《ぐんじん》の、歩兵《ほへい》の本分《ほんぶん》を守《まも》つたものだ。豪sえら》い、豪《えら》い‥‥」
かう云《い》ひ續《つづ》けて、高岡軍曹《たかをかぐんそう》はやがて詞《ことば》を途切《とぎ》つたが、それでもまだ賞《ほ》め足《た》りなかつたのか、モシヤモシヤの髭面《ひげづら》をいきませて、感《かん》に餘《あま》つたやうに中根《なかね》二|等卒《とうそつ》の顏《かほ》を見詰《みつ》めた。分隊《ぶんたい》の兵士達《へいしたち》はすべての事《こと》の意外《いぐわい》さに呆氣《あつけ》に取《と》られて、氣《き》の拔《ぬ》けたやうに立《た》つてゐた。が、日頃《ひごろ》いかつい軍曹《ぐんそ
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