燃えながら輝いてゐた、まん丸い二つの眼であつた。
「さよなら……」
荒荒しく女の腕を振りほどいて、さう叫び殘すと、私は振り向きもせずに扉の外へ飛び出した。そして、二段、三段と、大股に階段を駈け降りながら、苦苦しさ一杯に、自分を踏みくちやにしたいやうな氣持で、私は心の中に呶鳴り續けてゐた。
「馬鹿め、馬鹿め、馬鹿め……」
底本:「若き入獄者の手記」文興院
1924(大正13)年3月5日発行
入力:小林徹
校正:柳沢成雄
2000年2月19日公開
2005年11月15日修正
青空文庫作成ファイル:
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