梅龍の話
小山内薫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)著《つ》いた
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#始め二重括弧、1−2−54]
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著《つ》いた晩はどうもなかつたの。繪端書屋の女の子が、あたしのお煎餅《せんべ》を泥坊したのよ。それをあたしがめつけたんで大騷ぎだつたわ。でも姐《ねえ》さんが可哀さうだから勘辨してお遣りつて言ふから、勘辨してやつたの。※[#始め二重括弧、1−2−54]赤坂のお酌梅龍が去年箱根塔の澤の鈴木で大水に會つた時の話をするのである。姐さんといふのは一時は日本一とまで唄はれた程聞えた美人で、年は若いが極めて落ちついた何事にも襤褸《ぼろ》を見せないといふ質《たち》の女である。これと同じ内の玉龍《たまりよう》といふお酌と、新橋のお酌の若菜といふのと、それから梅龍の内の女中のお富といふのと、斯う五人で箱根へ湯治《たうぢ》に行つてゐたのである。梅龍は眼の涼しい鼻の細い如何にも上品な可愛い子だが、食べる事に掛けては、今言つた新橋の
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