女の膝
小山内薫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)実見《じっけん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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私の実見《じっけん》は、唯《ただ》のこれが一度だが、実際にいやだった、それは曾《かつ》て、麹町三番町《こうじまちさんばんちょう》に住んでいた時なので、其家《そこ》の間取《まどり》というのは、頗《すこぶ》る稀《ま》れな、一寸《ちょいと》字に書いてみようなら、恰《あだか》も呂《ろ》の字の形とでも言おうか、その中央《なか》の棒が廊下ともつかず座敷ともつかぬ、細長い部屋になっていて、妙に悪《わ》るく陰気で暗い処《ところ》だった。そして一方の間《ま》が、母屋で、また一方が離座敷《はなれざしき》になっていて、それが私の書斎兼寝室であったのだ。或夜《あるよ》のこと、それは冬だったが、当時私の習慣で、仮令《たとえ》見ても見ないでも、必ず枕許《まくらもと》に五六冊の本を置かなければ寝られないので、その晩も例の如くし
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