て、最早《もはや》大分夜も更《ふ》けたから洋燈《ランプ》を点《つ》けた儘《まま》、読みさしの本を傍《わき》に置いて何か考えていると、思わずつい、うとうととする拍子に夢とも、現《うつつ》ともなく、鬼気《きき》人に迫るものがあって、カンカン明るく点《つ》けておいた筈の洋燈《ランプ》の灯《あかり》が、ジュウジュウと音を立てて暗くなって来た、私はその音に不図《ふと》何心《なにごころ》なく眼が覚めて、一寸《ちょいと》寝返りをして横を見ると、呀《アッ》と吃驚《びっくり》した、自分の直《す》ぐ枕許《まくらもと》に、痩躯《やせぎす》な膝《ひざ》を台洋燈《だいランプ》の傍《わき》に出して、黙って座ってる女が居《い》る、鼠地《ねずみじ》の縞物《しまもの》のお召縮緬《めしちりめん》の着物の色合摸様まで歴々《ありあり》と見えるのだ、がしかし今時分、こんなところへ女の来る道理がないから、不思議に思ってよく見ようとするが、奇妙に、その紫色の帯の処《ところ》までは、辛《かろ》うじて見えるが、それから上は、見ようとして、幾《いく》ら身を悶掻《もが》いても見る事が出来ない、しかもこの時は、非常に息苦しくて、眼は開《ひら
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