《ふと》気付いて、この積んであった本が或《あるい》は自分の眼に、女の姿と見えたのではないかと多少解決がついたので、格別にそれを気にも留めず、翌晩は寝る時に、本は一切《いっせつ》片附けて枕許《まくらもと》には何も置かずに床《とこ》に入った、ところが、やがて昨晩《ゆうべ》と、殆《ほと》んど同じくらいな刻限になると、今度は突然胸元が重苦しく圧《お》されるようになったので、不図《ふと》また眼を開けて見ると、再度《にど》吃驚《びっくり》したというのは、仰向きに寝ていた私の胸先に、着物も帯も昨夜《ゆうべ》見たと変らない女が、ムッと馬乗《うまのり》に跨《また》がっているのだ、私はその時にも、矢張《やっぱり》その女を払い除《の》ける勇気が出ないので、苦しみながらに眼を無理に※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、女の顔を見てやろうとしたが、矢張《やっぱり》お召縮緬《めしちりめん》の痩躯《やせぎす》な膝《ひざ》と、紫の帯とが見ゆるばかりで、如何《どう》しても頭が枕から上らないから、それから上は何にも解らない、しかもその苦しさ切無《せつな》さといったら、昨夜《ゆうべ》にも増して一層《いっそ
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