であられるかも知らぬ。それももとより一理あって自分もそれに異論はない。しかしそれにはまたしかるべき時機がおのずからそのうち生じてくることと信ずる。それはそれとして、それと同時にこの『茶の本』を茶色表紙の岩波文庫の一本に数えるのもまた大いに意義の深い事ではなかろうか。
それからこの本の名を鴻漸《こうぜん》のそれに習って『茶経』と言わずに『茶の本』としたわけは、原文が陸羽の書物のそのままの英訳でないことを思い合わせる時、なまじいに、あの本の名を借り用いては、意外の連想から、本書の姿を見ひがめ、『茶経』そのものとの不即不離の関係を危うくする恐れがあることを村岡氏は懸念されたためである。
昭和四年一月三日
[#地から3字上げ]洋々塾にて 岡倉由三郎
底本:「茶の本」岩波文庫、岩波書店
1929(昭和4)年3月10日第1刷発行
1961(昭和36)年6月5日第38刷改版発行
2005(平成17)年11月5日第103刷発行
入力:kompass
校正:鈴木厚司
2008年6月6日作成
2008年8月31日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネッ
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