壁の眼の怪
江見水蔭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)寛政《かんせい》五年
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)典薬|勝成裕《かつせいゆう》が、
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一
寛政《かんせい》五年六月中旬の事であった。羽州《うしゅう》米沢《よねざわ》の典薬|勝成裕《かつせいゆう》が、御隠居|上杉鷹山《うえすぎようざん》侯(治憲《はるのり》)の内意を受けて、一行十五人、深山幽谷に薬草を採りに分け入るという、その時代としては珍らしい計画が立てられた。
その最終の目的地点は東北の秘境、本朝の桃源にも比べられている三面谷《みおもてだに》であった。
三面谷は越後の村上《むらかみ》領では有るのだけれど、又米沢からの支配をも受けているので、内藤《ないとう》家からも飯米を与えるが、上杉家からも毎年二十俵を、雪が積って初めて道が出来るのを待って、人の背を以て送られていた。そういう関係で、三面村の現状を能《よ》く調査して来いという、秘密命令も有ったのだ。
「ぜひ御一行に御加え下されえ。いかようなる任務でも致しましょうで」
かく申込んだのは、この頃米沢に
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