らい》は、必らず当家で致しまするで」
グズグズ云ったら尼を毒殺の一件。訴人するという脅かし文句をチラつかしたので。
「や、しからば我等。立退き申す」
こうなると九兵衛の欲張り、高い宿賃を差引いて、僅かに三十両ばかり返した切《きり》。
三人はそれどころでなく、夜陰に乗じて西中島を出立。それからどこへ行った事やら、再び、岡山へは来なかった。
それを西大寺越の峠道に、源之丞その他が待伏せして斬殺したという説があるが、これは取らぬ。
有斐録《ゆうひろく》に『出羽帰り候て御前に出《い》で、云われ候は、殊《こと》の他|御鬱《おふさ》ぎ遊ばされ、あれ程の事御心付き遊ばされずや、と申上げらる』とある。
金三郎、切腹覚悟の上にて、もう一度居据り直したらば、あるいは本統に召抱えられたかも知れぬので、その胆力試験に落第した為に、備前天一坊は失敗に終ったのかも。
底本:「捕物時代小説選集6 大岡越前守 他7編」春陽文庫、春陽堂書店
2000(平成12)年10月20日第1刷発行
底本の親本:「現代大衆文學全集」平凡社
1928(昭和3)年
入力:岡山勝美
校正:noriko saito
2009年9月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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