職権で純之進が大吟味を試みた結果、奇怪なる犯罪が暴露した。それは、七化役者尾上小紋三が、丹那の山里で大評判で、村中の女がことごとく恋をした。その中で勝利を得たのが椎茸畑《しいたけばたけ》の番人|政十郎《まさじゅうろう》の娘お露《つゆ》であった。
お霧は最近まで、御青物《おんあおもの》御用所《ごようどころ》神田《かんだ》竪大工町《たてだいくちょう》の御納屋《おなや》に奉公に出ていて、江戸|馴《な》れている上に、丹那小町と呼ばれた美人なので、村の若者が競って恋を寄せたのであったが、ことごとく斥けて、そうして七化役者と親しんだのであった。
二人は手に手を取って道行をしたという事になっていたのだが、それでは何者にか殺されたのであろう。恐らく相手の小紋三が下手人であろうという村方のいい立てが皆一致した。
純之進はそうは思わなかったが、別に証拠が上らぬので、詮議は打切にした。その為に出立が一日遅れたのであった。
帰り路は山越しに熱海《あたみ》に出た。坂口屋弥兵衛《さかぐちややへえ》方に一泊した。ここでまた驚くべき事実を発見した。ここに謎の人が泊り合せて虫の息でいるのであった。それは七化の小
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