怪異暗闇祭
江見水蔭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)天保《てんぽう》の頃
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)翌朝|深大寺《じんだいじ》門前
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)すり[#「すり」に傍点]
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一
天保《てんぽう》の頃、江戸に神影流《しんかげりゅう》の達人として勇名を轟かしていた長沼正兵衛《ながぬましょうべえ》、その門人に小机源八郎《こづくえげんぱちろう》というのがあった。怪剣士として人から恐れられていた。
「小机源八郎のは剣法の正道ではない。邪道だ。故に免許にはいまだ致されぬが、しかし、一足二身三手四口五眼を逆に行って、彼の眼は天下無敵だ。闇夜《あんや》の太刀の秘術を教えざるにすでに会得している。怪剣士というは彼がことである」
師の正兵衛さえ舌を巻いているのであった。
天保九年五月五日の朝。同門の若者、多くは旗本の次男坊達が寄って、小机源八郎を取囲んだ。
「ぜひどうか敵討《かたきうち》に出掛けて貰いたい。去年の今夜でござる。その節もお願いして置いた。この敵《かたき》を討
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