では能く分らなかったが、丈は雲を突くばかり、手には金剛杖を持っていた。
「生意気な山伏|奴《め》。さあ小机源八郎の闇夜の太刀先を受けて見ろっ」
「いくらでも受けるが、俺の姿が見えるかっ」と山伏は嘲笑《あざわら》った。
「何っ」
一刀両断は神影流の第一義。これ、実の実たる剣法であったのを、見事に身を交わされて、虚の虚とさせられた。
「おのれっ」
二度の打込は虚の実。二段の剣法。正面急転右替の胴切と出たところを、巧みに金剛杖で受留められた。
杖に鉄条でも入っているのか、その杖さえも切落せぬので、源八郎もこれは手ごわいと、先ず気を呑まれた。
源八郎危しと見て、五郎勘七三郎は、種ヶ島の短銃を取出し……までは、好かったが、その時代のは点火式で、火打石で火縄へ火を付けて、その又火縄で口火へ付けるという、二重三重の手間の掛かる間に、金剛杖でぐわんと打たれて、手に持っていた火打鎌が、どこへ飛んだか、夜目自慢の七三郎も、こうなると面食《めんくら》って、見付けられず、手探りに探っている間に、何度頭を金剛杖で撲《なぐ》られたか、数知れず、後には気絶して突伏してしまった。
鋭く斬込んで来る源八郎を扱
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