根が張っている。左には石や瓦のかけ[#「かけ」に傍点]が散《ちらか》っている。みな飛降りるのに都合が悪い。ちょうど貴様達二人のいる所が、草の生え具合から土の柔かみで、足場が持って来いだ。それをこの二丈五六尺から高い樹の上から、暗闇の中にちゃんと見分けることのできる俺だのに、貴様達にはそれができぬ。夜目について威張った口を利くのは止《よ》せっ」
これには二人とも驚いた。正《まさ》しく天狗だ。いでその鼻の高いのを、降りて来て見ろ、斬落してくれるぞと、云い合さねど互いに待構えた。
六
「さあ、飛ぶぞ。退《ど》かなけりゃあ片足をすり[#「すり」に傍点]の頭の上に、片足を三ぴんの頭の上に、乗っけて立つように飛んで見せるぞ」
そう云いながら樹上の怪山伏は、一気に二丈五六尺の高さから飛降りた。
「えいっ」
待構えていた小机源八郎は飛降りてまだ立直らないところを、度胆を抜くつもりで刀の背打《むねうち》を食わせようとした。
「はっはっはっ」
後《うしろ》の方で又例の高笑いがした。
前に飛んだのは、大きな幣束《へいそく》であった。後に山伏は早や立っていた。
何しろ大男だ。顔ま
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