うどこの裏山で、抜き取った品物を出し合って勘定をしていたところへ、不意に現われて、金剛杖のような物で滅茶滅茶です。三人もじっとして打たれるようなのじゃあありません。懐中《ふところ》に呑んでいた匕首《あいくち》で、魂限《こんかぎ》り立ち向ったんですが、とても敵《かな》いませんでしてね。三人とも半殺しの目に遭わされました。それが原因で逆ずり金蔵は二月ばかり患って死んでしまいました。節穴の長四郎と私は湯治《とうじ》に行くてえような有様で……そこで去年、その敵討というので、すっかり準備をして、長四郎と二人でね、暗闇祭に来ましたがね」
「どんな準備をして」
「目つぶしです。目つぶしを仕入れて、それを叩きつけてから斬付《きりつ》ける手筈でしたが、矢張いけませんでした。長四郎があべこべに眼を潰されて了いました」
「向うから目潰しを投げたのか」
「いいえ、指を眼の中へ突込みやあがったので」
「酷《ひど》い事をするな」
「とうとう私一人になってしまいました。今年は口惜しいから、どうしても私一人で敵《かたき》を討つ了簡で、実は種ヶ島《たねがしま》を忍ばせているんでございます」
「去年も矢張山伏姿か」
「左
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