。もちろんこれは昔のすっぱ[#「すっぱ」に傍点]の家から伝わった法が土台になっておるそうで……そこで、まあ私もその修業の法は早く済ましてしまいまして、闇夜でも手紙が読めるくらいまでには行っております。異名を五郎助七三郎《ごろすけしちさぶろう》と申しますが、七三郎が本名で五郎助は梟《ふくろう》の啼《な》き声から取ったのでございますがね」
「それで今、お前の仲間は」
「仲間は日本国中にどのくらいあるか知れませんが、関東だけでざっと五百二十人ばかり、でも本統に夜目の利く奴《やつ》は、僅かなもので、ようやく五人でございました。今から六年前のちょうど今月今日召捕られまして、八月十九日に小塚《こづか》っ原《ぱら》でお仕置を受けました鼠小僧次郎吉《ねずみこぞうじろきち》なんか、その五人の中には入って居りません。あんな野郎はまだ駆出しで」
「その五人というのは……」
「そう申しては口幅っとうございますが、先ずこう申す五郎助七三郎が筆頭で、それから夜泣《よな》きの半次《はんじ》、逆《さか》ずり金蔵《きんぞう》、煙《けむり》の与兵衛《よへえ》、節穴《ふしあな》の長四郎《ちょうしろう》。それだけでございます
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