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一、私が棄てられた情人の頭文字Eを以て、新婚の夜は、妾の横顔英仏海峡に描いて敬礼すること。
二、毎朝、妾の舌をブラシで掃除してくれること。
三、妾が踊子でありソプラノの唄手、イクラ座のプリ・マドンナである天分を認めること。
四、ゴルフ競技会の前夜は、貴男は敬虔《けいけん》な態度で夜を徹して妾の小指を保管すること。
五、妾の生理学について貴男は熱心に研究すること。
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――マドモワゼル君子、僕は貴女の要求の全部に僕の一生を賭けます。
彼女ユーロップの頭とアラビア海の心臓と東洋風の肉体、苦もなく私に委せてしまった。
しかし彼女の凱旋門《がいせんもん》、恐るべきことがある。
花田君子から私は動物的な感触とピカデリあたりの聯隊旗《れんたいき》みたいな嘔吐物《おうとぶつ》をうけたのだ。
彼女が東洋の女の尻尾と男性の舞踊会に用いるルーブル紙幣の仮面、といって彼女が銀色のコオセットに太平洋をぶらさげてはいないのだ。やはり彼女も海豚《イルカ》なのだ。
それにしても花田君子の抱擁はまたしても私に新らしく生れた時代の不安を与えたものだが、一た
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