フランス流の友人河村は日本の女によって恋の重荷をになう。河村は決して幸福ではないのだ。横田はヤンキーの女によって陶酔されメイ・マアガレッタの虚栄心を満足さしたが、河村はひたすら必要品に過ぎなかった。河村の存在は彼の所有主を情けないものにした。河村の華著《きゃしゃ》な肉体と美しい外貌《がいぼう》さえむごたらしく閉ざされた。
 しかし、私の場合、私はヒロイストだ。私は女を軽侮しなければならぬ。女を不幸にしなくてはならぬ。女達が私に身を委《まか》せるとき、彼女達の感受性から海豚《イルカ》の粘々した動物性をうける。ときによると塹壕《ざんごう》から掘出した女|聯隊《れんたい》の隊長の肢体を。もと/\我々が地理と科学の発生を埋葬する。
 ――ヨシユキ、何か考えている? 惚れ/″\と妾《わたし》の俳優|羅馬《ローマ》皇帝が。妾は貴男《あなた》に対する研究心を根気よく棄てない、まるでアラビアの貴婦人みたいに。妾に色眼鏡買ってくれたのも貴男の持ち前の愛情が風流男の花輪をかくように。
 素敵、どう、でない?
 ――妾ったら無条件で貴男に降服することがある。但し貴男が妾の要求を承知しての話なのよ。
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