い彼女の頭、骨から見下した流動的な肉感ってものが、さながら母体を地球儀にして埋れた出産前の幼児にさえ酷似《こくじ》しているのだ。Bullock 恋にやつれたエレクトラの広告板から湧き出すオオケストラ、しかも彼女の才能は日比谷街にもまして複雑なのだ。太く短い環、古代の貞節な女に似て垂れ下った醜い肩、まるで病み疲れてサタンに生育を阻止された女が奇妙な嬌態《きょうたい》をして、流行の衣裳と近代の手管をもって私の前に現れたのだ。

 コメット・ヌマタは夜の空間、花火吹散らして空高く、飛行ズボン脱いで牡鶏《おんどり》の真似をしている。ひどく古加乙涅《コカイン》の酔が利いた夜であった。
 今では男が女のようにスカートをはく時代なのだ。銀座の市場では阿片《あへん》の花が陽気に満開し、薬種屋の前では群集が巡邏《じゅんら》に口輪を嵌《は》めている。地球の地下室では切開された、メロ・ドラマの開演のベルがけたたましく鳴りひびくのだった。
 こうした瞬間を限って変る人間の気持ちと、構成され破壊される歴史の記録を掲示する銀座の青色の夜、プロレタリア駆逐《くちく》したプチ・ブルジョワ達によって、かくも盛大に開演さ
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