は街のフラッパーどもの額に支那流の卑しい装飾をつける。私は油黄を塗布する、未来派の入墨を瞼に刺繍《ししゅう》する。
カバレット銀座の情婦、無智な妖婦《ようふ》から電話がかかってくる。私は裸でお前の心に転落する。ニグロの海よりも鉛色の恋の貸家、お前馬鹿ほどたのもしいものは、この世にない。浮気ものにインターナショナルの戦勝盃を与えて、お前涙もろい女、近代主義の楽天家、お前が私を愛する心、俺のためには死をも辞せない。お前を尊敬する全ての男はお前を貨物自動車にのったヴィクトリア女皇だと讃《ほ》めたたえる。俺の愛は昨日よりも深くお前を愛する。すると彼女の癇高《かんだか》い水銀色の声が市内の電線を引ちぎってしまう。
――うわ! 妾は嬉しい。憎い男、妾の伊達男《だておとこ》、お前が苦しむほど抱きしめたい、女の全て投げ出して。恋の司令官早く来い。
私はコンビネエション嵌《は》めている。私赤い絹巻煙草の煙、吐き出すと気取ったマドモワゼル花田の靴音が廊下をピアノのようにたたく。
私が日本を棄《す》てて露西亜《ロシア》語の国、旗亭ダリコントの部屋の隅で、クレオパトラの鼻がクリミヤ半島になる迄の女の
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