性の愛情まで資本家に身売りしていることが分るのであった。
窓の外にはネオ・アクメイズの姿がプロレタリアの肉体を蝸牛《かたつむり》のように這っている。アンナ・ニコロ接吻したまま、
――ヨシユキ、ロマンチシズムとヒロイックなスラビナの時代はまだロシア人は香のいい肥料があったのです。妾達の祖先が献身的であったころ、アルチバセフの快楽主義にさえ身顫《みぶる》いしたロシア婦人は欧羅巴《ヨーロッパ》スタイルの淫事も、寝床で踊る未来派の怪奇も、断髪にする苦痛さえもなし、公爵婦人の名誉さえ瞬間に地に葬ったのです。
――ニコロ、敬虔《けいけん》、僕の思いも過ぎ去った恋物語りです。
ああ、妾が貴男を思っている。無産階級の靴音にも増して力づよく慕しい。
――僕の心意気、見してやる。白薔薇のような花嫁に。
私達戸外に這い出す。青い絨氈《じゅうたん》の上を鏡のない人間が歪んだシルクハット、胸は悲しい葬《とむらい》だ。心行くまで私はお前を熱愛したのだ。けれど感覚の最期がいたましい。カバレット・ポンペアの低い嬉びに、世界各国の鶏《にわとり》の歌奏でるユダの主人、私はシャンパン、緑色の天井、進撃勇ましい、
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