車が疾走する、満月、天主閣、車が湖畔を疾走するとき、再びロップは僕に傾倒した。
A・A橋の下で、ボートに乗って夜の河岸を離れて、ロップは、カルメンの五章を唄いながら櫂《かい》を水に落した。
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いくら、お前が云い寄っても、駄目よ。
トララ トララ トララ トララ
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緑色のイルミネェション、青い眼鏡に穴をあけながら、水の上を進んで行く。
奔流、ごろつきのような波の音が僕に英国少女メリーの靴の踵《かかと》と、乳房に鬘《かつら》をかむったような女主人を思い出させた。
そのときロップが僕に云った。
――ねえ、二人でクラブへ行きましょう。スペイン式の女学生がいるわ、シャンパン飲まして欲しいの………。
――ロップ、紙幣と品行方正の匂いがする。
――よう!
――醜婦奴《しゅうふめ》、ガウンが百度ひらいたって、糞《くそ》。
――………………
――………………
――――――――――――――――――――――――
クラブの化粧室に這入ると、ロップは××になって仰向けのまま寝てしまった。僕は浴場で屡々《しばしば》、結婚の感触を衝《う》
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