くっている。××開始、ウェートレスの英国の少女、メリーをからかってしたたか膝を折られ泣面をしている男。だが、メリーは僕を見ると恋愛相談所[#「恋愛相談所」は枠囲み]めがけて夢中に走り出した。
 ――いらっしゃい。妾の主人は、非度《ひど》いラヴ・レタの蛇なのです。恋愛過度、チタでレオ・トルストイに小説を書く方法を三万ルーブルも仕払って教ったのですが、いまの世の中で何んの役に立つものですか………。
 壁にはルノアールの偽《にせ》もの蜿蜒《えんえん》の画がかかっていた。
 しかし僕は内緒で、片隅の赤髪の女に色眼をつかった。彼女は巨大で腿《もも》のあたりは猶太《ユダヤ》女の輪廓をもって、皮膚は荒れて赤らんで堅固な体躯をしていた。
 ――君の名は? と、僕が色欲のダリアに向って聞いた。
 ――妾《わたし》、貴男の情婦、夜のボップよ。
 すると忽《たちま》ち女は死物狂い、僕に倒れかかった。
 僕とボップ、裏街の夜、アアク燈、柳暗花明の巷《ちまた》を駈け抜けると、古寺院の境内、数時間、僕はだまって経過した。
 ――ロップ、一時は駄じゃれで君をメキシコ湾だと云ったが、僕の純情知ってくれたか。
 辻自動
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