しるし》があらわれたことであった。何もののために――プロレタリアの巨弾によってであろうか? ところが、アメリカにおけるプロレタリア自身、パニックの最中において米国産業組織の同伴者であった。すると、犯人の武装を解除して見よう。
犯人は英国の大銀行団と、その背後のフイナンシャーであった。
後日になって、倫敦《ロンドン》のサンデー・ビクトリアル紙は左の如く当日の模様について述べた。
(ウォール街は、過去において吸いあげポンプと化していた。世界の資本を呑みこみ、その跡に到るところ空洞を生ぜしめた。倫敦市場のみでもその地理書をひもとくまでもなく、一日数万の米国株式の売買があった。巴里《パリー》、伯林《ベルリン》、ブラッセル、アムステルダム、何《いず》れも電信の速力は一杯にウォール街に資金を流入した。大西洋北岸の富の余剰《よじょう》はいまや米国株式に変形したと歎《たん》じさせた。このウォール街にも遂《つい》に破局があった。財界|平衡則《へいこうそく》に反した信用のインフレーションは英蘭《イングランド》銀行の利下げとともにその崩落の道をたどった。云々。)
英国金融資本が、米国産業資本に強靭《き
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