ょうじん》な波瀾《はらん》をまきおこしたために、米国資本を背景とした商工都市大阪は、ウォール街を恐怖がおそうと同時に、赤鼻女の野暮なアメリカの衣裳をつけて財界の迷路に立った。
 また、銀塊《ぎんかい》相場を暴落させた、ワシントンの要路の背景にあったものは、誰か。
 一九二六年、恐慌状態にあった銀塊市場にたいして、英領|印度《インド》において組織された印度貨幣金融委員会が、一九二七年三月二十七日、三億五千万オンスの銀持高をもって、ルーピーの新貨幣制を決定した。その背後にあって英国当局者は銀売、金買いの機微な策略によって今日を期していた。
 資本主義戦争の尖端《せんたん》を行くもの、これも、犯人は英国であった。
 突然、電鈴が私の耳に亀甲町にある、綿花綿布倉庫会社の事業停止による賃金不払のため、従業員のストライキを報《し》らせた。

 だが、諸君。
 これは何んのためのストライキだ。

     6

 夜になって襲来した暴風雨が、街から灯火を奪った。
 午後と、午前の境界にもかかわらず、ラジオが、倫敦から放送される歌謡を伝播《でんぱ》していたのを疾風のなかで私は嚥《の》み下した。ココア色
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