職業婦人気質
吉行エイスケ
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)煩悶《はんもん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#ローマ数字2、1−13−22]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
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美容術をやっている田村スマ子女史は山ノ手に近代風なささやかなビュテイ・サロンを営んで、美しいモダァン・マダムたちにご奉仕していた。そして彼女の夫の田村英介氏は才能あるにもかかわらず不幸にしてまだ無名の文士ではあったが、スマ子女史がつねに「彼氏浮気もの」と称しているだけになか/\各方面に発展してスマ子女史に愉快な煩悶《はんもん》をときどき提供するのであった。
すでにスマ子女史と英介氏が結婚して数年になっていたが、いまだかつて二人は、ちょいと拗《す》ねたり、お小使いがなくてすこしばかり憂鬱《ゆううつ》になることはあっても、こんにちかぎり僕は君とわかれる、とか、そんなに君が云うんなら妾《わたし》でて
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