、自分で自分を監禁することはできないって? いや待ちたまえ、すぐ行く。貴嬢のご機嫌《きげん》奉仕をつかまつる。じゃ待っていてくれるか…………そいつはありがたい。香料は今晩はミモザがよかあないか。」
 卓子ではスマ子女史がビフテキに銀色のナイフを深く惨ませて云った。
――浮気?
――さうだ。
――じゃ妾、ここを出てフロリダで一踊りしてから帰っていますわ。
――ああ。
――そのかわり、クリスマスには精神的な贈りものをきっとくれる?
――ああ、精神的なものを…………。



底本:「吉行エイスケ作品集」文園社
   1997(平成9)年7月10日初版発行
   1997(平成9)年7月18日第2刷発行
底本の親本:「吉行エイスケ作品集 ※[#ローマ数字2、1−13−22] 飛行機から墜ちるまで」冬樹社
   1977(昭和52)年11月30日第1刷発行
※底本では「!」は全て右斜めになっていたが「!」に変更した。
※底本には「吉行エイスケの作品はすべて旧字旧仮名で発表されているが、新字新仮名に改めて刻んだ。このさい次の語句を、平仮名表記に改め、難読文字にルビを付した。『し乍ら→しながら』『亦
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