膚の断面に機能の失せた女の蠱惑《こわく》が感じられた。

3 ホテルの部屋で僕はかの女が花瓶の中の花の茎のように華奢な肉体なのに気が付いた。僕は女性にたいする狩猟家であったか。かの女の痩せた花粉のついた装飾にすら、僕は情欲をもって鎧《よろい》ばっている。女性の尻ばかり見て暮す男にとっても、売笑婦の心理的な綺羅《きら》によって飾られた脣《くちびる》から、下腹部にかけてのガリッシュな紅色の部分については特殊な魅惑を感じる。かの女たちは小指のような微生物まで琥珀色《こはくいろ》の液体で染めた。
 エロチシズムの演技場に行くまでの道程については云う必要もあるまい。そして近代女の技術主義についても。
「――あなたの一緒にいた御婦人について伺いたいわ。」
「――恋愛でないセンジュアリズムの見本。」「――と、云うと?」「――女房だ。」
 街に展いた窓の出張《でっばり》に置かれた洋紅色の花鉢を寝台の枕もとに持ってくると、夜の女は眸《ひとみ》の快楽のために、
「――その女房と云うのはどんな役目なの?」
「――君に委任された僕のセンジュアス以外のものの委托品《いたくひん》あずかり所なのだ。」
「――あなた
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