れた皮膚をしてアスハルトの冷たい街路に踊る靴をすべらした。都会の建物の死面に女達は浮気な影をうつして、唇の封臘《ふうろう》をとると一人の女が青褪《あおざ》めた朋輩に話しかけた。
「あのなあ、蒙古《もうこ》人がやってきはって、ピダホヤグラガルチュトゴリジアガバラちゅうのや。あははは。」
「けったいやなあ、それなんや。」
「それがなあ。散歩してーえな、ちゅうことなのや。おお寒む。」
酒と歌と踊のなかからでてきた男女が熱い匂のする魅力にひかれて、洪水のようにながれる車体に拾われると、夥《おびただ》しい巡査がいま迄の蛮地《ばんち》のエロチシズムの掃除を始めて、街は伝統とカルチュアが支配する帝王色に塗りかえられた。
同じ時刻。太田ミサコの黒いスカートが冷たい路上で地下の電光に白く煌《きらめ》いた。彼女の横顔が官衙《かんが》と銀行と、店舗のたちならんだ中央街の支那ホテルのまえまでくると細かく顫《ふる》えた。形のいい鼻の粗い魅力がうす黒い建物に吸いこまれると灰色のホテルの壁にそって彼女の影がコンクリートの階段を中年女の靴音をのこして一歩、一歩、女の強い忍従《にんじゅう》が右に折れると、或る部屋
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