女百貨店
吉行エイスケ
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:豪奢《ごうしゃ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)同盟|罷業《ひぎょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#ローマ数字2、1−13−22]
−−
1
「ハロー。」
貨幣の豪奢《ごうしゃ》で化粧されたスカートに廻転窓のある女だ。黄昏《たそがれ》色の歩道に靴の市街を構成して意気に気どって歩く女だ。イズモ町を過ぎて商店の飾窓の彩玻璃《いろがらす》に衣裳の影をうつしてプロフェショナルな女がかるく通行の男にウィンクした。
空はリキュール酒のようなあまさで、夜の街を覆うと、絢爛《けんらん》な渦巻きがとおく去って、女の靴の踵《かかと》が男の弛緩《しかん》した神経をこつこつとたたいた。つぎの瞬間には男女が下落したカワセ関係のようにくっついて、街頭の放射線から人口呼吸の必要なところへ立去って行った。
午後十一時ごろであった。大阪からながれてきたチヨダ・ビルのダンサー達が廃《つか》
次へ
全23ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
吉行 エイスケ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング