スポールティフな娼婦
吉行エイスケ

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)投錨《とうびょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#ローマ数字2、1−13−22]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なよ/\とした
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 夜の小湊は波打ぎわの万華鏡のなかに、女博物館が開花していた。その夜は湾内に快速巡洋艦アメリカ号が投錨《とうびょう》した夜なので、女達の首にはたくましいヤンキーの水兵の腕がからんでいた。山下界隈の怪しい酒場で酔泥《よいど》れた一列の黒奴の火夫達が、最新流行歌をうたって和服の蠱惑《こわく》の街に傾いた。
 その前日から、小湊のチョップ・ハウスの断髪女を中心にした三つの殺人事件が本牧横町の街を騒がしていた。数日前「Matsu・ホテル」のダンス・ホールでもと吉原の遊女であった中年の女将《おかみ》が殺害された事件。その翌日、朝鮮の青年が「天界ホテル」の寝室にいた白痴のマリを殺害しようとした未遂事件。「アオ
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