紫色の影をつくる腋《わき》の下に魅力を感じて立あがると、藍色のアブサン酒を彼女のグラスに注《つ》いだ。
黒奴《ニグロ》の火夫達の一団がぞろ/\這入ってきた。ジャズ・バンドが開演された。マリと一人の怪偉なニグロがシミー・ダンスを×××をかちあわして踊りだした。マリが時々奇妙なかけ声を発すると、それに合してニグロの男は白色婦人が××で好む一種の奇妙な声をだした。床をがた/\踏み鳴らしながら、マリが私にちかづいてくると、
「おい、おれはおまえがやあになった。」
「マリ、あばよ。」私がさけんだ。
するとマリはくす/\わらいながら黒い男と部屋をでて行った。私は多彩な女の断面図にベールをかけるように煙草《たばこ》のけむりをふかした。しかしいつのまにか私は女の×のなかにいた。紫色の衣服をつけたお六が、私の肩に手を巻くとそっぽを向いて煙草の黄色いけむりを吐きだした。
私は強烈なアブサン酒をあおると、彼女に言った。
「おい、お六ちゃん。亭主が引ぱられてからの感想が聞きたいよ。」
「そんなこと云わんとおいておくれよ。」
「淋しいかい。」
「淋しくなくてかい。」
「信じているかい。」
「犯罪については
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