げようがないとみる人があるけれど、それは真の芸術を理解したものではない。単に功利的に制限され、規定されるようなものはけっして崇高の真の芸術ではない。芸術の原理はこれを主観的に求めなければならぬ。芸術の上乗なるものは、快楽主義や功利主義を超越したものである。
八 法理論
法理について一言すれば、法理はやはり哲学的に根本原理によって解釈さるべきもので、単に経験的に、帰納的に解釈をしても、満足な解釈の得らるべき性質のものではない。人によっては法理は進化論的に解釈すべきものと考えているけれども、それは法理の変遷、推移の跡を尋究するだけであって、法理そのものの根本的の解釈ではない。法理の根本的原理をさかのぼってゆけば、どうしてもロゴスというような哲理にもとづかなければならぬ。世界のあらゆる方面に法則態の現われがあるが、人間社会を整理し、統御してゆくに当っては、法律制度のごとき諸種の規定を要する次第で、その法律制度の改正というようなことは、時世境遇の変化とともに必要となるが、その原理は法律制度そのものの中において求むべきではない。どうしてもその法律制度の拠って起るところの根本原理に基づ
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