研究所とともに三幅対を作るそうである。その設備のごときずいぶん大きなもので、例えばその倉庫には三十万貫に近い穀物を貯える事が出来る。動力には電気を用い、器械は最新式に依り十時間に四トンの粉を作る事が出来る。また麺麭製造部もあって大仕掛けの研究をやるようになっている。この設立に際して農務省は三十万円ほどの費用を支出し、なお年々保護を与えるはず、そしてドイツの製粉組合や製麭《せいほう》組合等の合同で維持して行くとの事である。貯蔵、製粉、製麭に関するあらゆる科学的並びに実用的の研究をする外、なお広く民間の需《もとめ》に応じて雑穀、粉、麺麭等の分析等をするそうである。
[#地から1字上げ](明治四十年十一月十二日『東京朝日新聞』)
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三十七
ロシアの蟻
露国のカザン大学は古来有名な科学者の出た処である。近頃ここのルスツキーという動物学者の著わした『ロシアの蟻』と題する書のごときも斯学《しがく》上有益なものだそうである。初編だけ刊行されたが八百頁の大冊である。著者の調べただけでも露国全体に産する蟻の種類が三千五百もあるとの事である。
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