れは鉱山の坑夫などで多数の人の生命を救い危険を除くために自分の生命を賭した者に授与するはずだという。その綬《リボン》は青に黄の縁《ふち》を取ったもので一等二等に区別されてあるそうな。
結核病研究の万国会議
来年九月二十一日より十月十二日まで米国ワシントン府で表題の会議が開かれる。全体七部門に分れて、結核に関する病理、療法、予防その他一切の会議をするはずで、また開会中は該病に関する展覧会を開いて公衆に観せるそうである。[#地から1字上げ](明治四十年十二月十八日『東京朝日新聞』)
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五十二
ペストと蚤
ペストと云えば鼠を聯想するが、鼠族の間にこの病毒を拡めるものは蚤だという事がだんだんに確かめられるらしい。ある人が天竺鼠《てんじくねずみ》について試験したところによれば、たとえ健全なのと病にかかっているのとを接近させぬようにしておいても蚤が移ると感染する。また健全な方を籠に入れて吊しておいても、蚤が飛び上がる事の出来るくらいの高さに吊したのではやはり感ずるが、それ以上高くするか、また細かい網に入れて蚤の出入りせぬようにしておけば伝染せぬという。もし鼠が人間なら捕蚤《ほそう》の懸賞でもするところだろう。ついでにペストの本家本元たるインドでは宗教上の迷信から殺生を絶対的に忌むので、鼠狩りの実行が甚だ困難なようである。
[#地から1字上げ](明治四十年十二月十九日『東京朝日新聞』)
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五十三
人造藍と天然藍
藍《あい》を人工的に合成する法が出来て以来、人造藍の需要が増すにつれて天然藍の産額が減ずる傾向をもっているのは著しい現象である。例えば天然藍の産地たるインドではこの二、三年の間に藍の栽培面積が半分以下に減少してしまった。また英国では一昨年と昨年との比較統計によると人造藍の輸入高が二割ほど増し、これに反して天然藍の方は七分くらいの減額を示している。しかしまだまだ天然のが人造のに圧倒されるところまでには月日がある。栽培法や製法の改良を加えて行けば、天然藍も当分市場に立ちゆかれる見込みだという。
[#地から1字上げ](明治四十年十二月二十日『東京朝日新聞』)
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五十四
水晶の鋳物
水晶は硝子《ガラス》とちが
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