月花の定座の制限とでは言わば次元的《ディメンショナル》に大きな差別がある。前者の拘束範囲が一つの面であるとすれば、後者はその面内にただ一つの線を画するような感じがある。もしこういう拘束がなかったとすると各自の個性はその最も安易な出入り口にのみ目を向けるであろうが、定座の掟《おきて》によってそれらのわがままの戸口をふさがれてしまうので、そこでどうにかそこから抜け出しうべく許されたただ一筋の困難な活路をたどるほかはないことになる。しかしそこをくぐることによって、もしそうでなかったら決して生涯《しょうがい》見ることのなかったはずの珍しく新しい国を遍歴する第一歩を踏み出すことができるのである。もっともこのようなことは何も連句に限らず他の百般の事がらに通有ないわゆる「転機」の妙用に過ぎないので、われわれ人間の生涯の行路についても似よったことが言われるであろうが、そういう範疇《はんちゅう》の適切なる一例として見らるるという点に興味があるであろう。またそう見ることによって定座の意義が明瞭《めいりょう》となり、また制作に当たっての一つの指針を得ることができるであろうかと思われる。
そういう役目を月と
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