形として成立しうるかもしれないが、しかしそれでは、それ自身としての存在を有するきまった足場の上に立つところの、従って一つのきまった名によって呼ばるべき詩形は成立し得ない。気ままにピアノの鍵盤《けんばん》をたたきまわっても一つの音楽であるかもしれないがソナタにはならないと同様である。そういう意味における統制的要素としての定座が勤めるいろいろの役割のうちで特に注目すべき点は、やはり前述のごとき個性の放恣《ほうし》なる狂奔を制御するために個性を超越した外界から投げかける縛繩《ばくじょう》のようなものであるかと思われる。個性だけでは知らず知らずの間に落ち込みやすい苟安自適《こうあんじてき》の泥沼《どろぬま》から引きずり出して、再び目をこすって新しい目で世界を見直し、そうして新しい甦生《そせい》の道へ駒《こま》の頭を向け直させるような指導者としての役目をつとめるのがまさにこの定座であるように思われるのである。
 もっとも連句におけるいっさいの他の規約、たとえば季題や去《さ》り嫌《きら》いの定めなどもある程度まではやはり前述のごとき統制的の役目をつとめることはもちろんであるが、しかしこれらの制限と
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