、そうしてそれらの現象の中に共通なる何物かを求めることが望ましく思われる。そういう共通なものがはたしてあるかという疑いに対しては、従来の物理学から見てまるで異なる方面の現象と思われるものの間に、少なくも formal な肖似の著しいもののあることは多くの人の認めるところであろう。少なくも肖似していると多数の人に思わせるような何物かがあることだけは確かである。この何物かは何であるか。それを説明すべき方則はまだ何人も知らないのである。しかしともかくも何かしら一種の方則なしに、どうしていったいそういう事が起こりうるであろうか。
この難儀の問題の黒幕の背後に控えているものは、われわれのこの自然に起こる自然現象を支配する未知の統計的自然方則であって、それは――もしはなはだしい空想を許さるるならば――熱力学第二方則の統計的解釈に比較さるべき種類のものではあり得ないか。マクスウェル、ボルツマン、アーレニウスらを悩ました宇宙の未来に関するなぞを解くべきかぎとしての「第三第四の方則」がそこにもしや隠れているのではないか。
このような可能性への探究の第一歩を進めるための一つの手掛かりは、上記のごとき統
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