−7]《ジカウェイ》の測候所を見に行く。郊外へ出ると麦の緑に菜の花盛りでそら豆も咲いている。百姓屋の庭に、青い服を着て坊主頭に豚の尾をたらした小児が羊を繩《なわ》でひいて遊んでいる。道ばたにところどころ土饅頭《どまんじゅう》があって、そのそばに煉瓦《れんが》を三尺ぐらいの高さに長方形に積んだ低い家のような形をしたものがある。墓場だと小僧が言う。
 測候所では二時に来いというからそれまで近所を見てあるく。向こう側にジェスウィトの寺院がある。僧院の廊下へはいって見ると、頭を大部分|剃《そ》って頂上に一握りだけ逆立った毛を残した、そして関羽《かんう》のような顔をした男が腕組みをしてコックリコックリと廊下を歩いている。黙っておこったような顔をしてわき目もふらず歩いて行ってまた引き返して来る。……異国へ来たという事実がしみじみ腹の中へしみ込んだ。
 寺院の鐘が晴れやかな旋律で鳴り響いた。会堂の窓からのぞいて見ると若いのや年取ったのやおおぜいのシナの婦人がみんなひざまずいてそしてからだを揺り動かして拍子をとりながら何かうたっている。
 道ばたで薄ぎたないシナ人がおおぜい花崗石《みかげいし》を細かく
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