け、後者の一部は永久的のものにする。一方ではレニングラードからランゲル島へかけベーリング海近くまでも飛行機を飛ばし空中写真測量で北シベリアいったいの地図を作る事になっている。なおそのほかに探険船シビリアコフ号を艤装《ぎそう》して途中でいろいろの観測研究をすると同時にただひと夏に北氷洋を乗り切るという最初のレコードを作ろうという計画を立て、それが立派に成功したのである。この船の航海中に遭遇したいろいろな困難のエピソードについてはすでに新聞雑誌にかなり詳しく紹介されたからここに繰り返すまでもない。しかしこの成功が決して偶然の僥倖《ぎょうこう》によるものではなくてちゃんとした科学的な基礎の上に立つものであるということを知る人が少ないようである。ウィーゼ氏の話によると数年来かの国の気象学者たちは、気圧その他の気象学的要素の配置から夏期における北氷洋上の氷の分布状況を予報することを研究し、それがだいぶうまく的中するようになった。そのおかげで今度の航海がたいへんに楽であったというのである。ことしの大規模の観測所増設によって、今後北氷洋の状況がますます明らかになればなるほど今後の航海はますます楽にな
前へ 次へ
全8ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング