物理学の応用について
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)問題に逢着《ほうちゃく》する。

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)塩魚類|鰹節《かつおぶし》の乾燥

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正二年三月『理学界』)
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 物理学は基礎科学の一つであるからその応用の広いのは怪しむに足らぬ。生命とか精神とかいうものを除いたいわゆる物質を取扱って何事かしようという時にはすぐに物理学的の問題に逢着《ほうちゃく》する。吾人《ごじん》が日常坐臥の間に行っている事でも細かに観察してみると、面白い物理学応用の実例はいくらでもある。ただそれらは習慣のためにほとんど常識的になっているので、それと気が付かないだけである。例えば台所における物理学の応用だけでも、一々列挙すれば一冊の書物が出来ようと思う。
 純粋な科学の各種の方面でも物理学を応用しあるいは物理学の研究方法を転用する事が盛んになる。天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の
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