が声が出なかった。
 最後の近くなったころ妻がそばへ行って呼ぶと、わずかにはい寄ろうとする努力を見せたが、もう首がぐらぐらしていた。次第に死の迫って来る事を知らせる息づかいは人間の場合に非常によく似ていた。
 遺骸《いがい》は有り合わせのうちでいちばんきれいなチョコレートのあき箱を選んでそれに収め、庭の奥の楓《かえで》の陰に埋めて形ばかりの墓石をのせた。
 玉が死んだ時は、自分が病気で弱っていたせいかなんとなく感傷的な心持ちがした。だれにもかわいがられずに生きて来てだれにも惜しまれずに死んで行くのがかわいそうであった。しかし三毛の死はみんなが惜しんでいるという自覚が自分の心の負担をいくぶん軽くするように思われるのであった。三毛の死後数日たって後のある朝、研究所を出て深川《ふかがわ》へ向かう途中の電車で、ふいと三毛の事を考えた。そして自然にこんな童謡のようなものが口ずさまれた。「三毛のお墓に花が散る。こんこんこごめの花が散る。芝にはかげろう鳥の影。小鳥の夢でも見ているか。」それからあとで同じようなものをもう三つ作って、それに勝手な譜をつけていいかげんの伴奏をもつけてみた。こんな子供らしい
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