りょ》のような玉にもやはり春の目さめる日はあった。さかり[#「さかり」に傍点]がつくと彼は所かまわず尿水を飛ばして襖《ふすま》や器具をよごした。あまりやっかいをかけるから家族のほうから玉を追放したいという動議が出た。そうしないでこの悪癖を直す方法はないかと思って獣医に相談すると、それは去勢さえすればよいとの事であった。いくら猫《ねこ》でもそれは残酷な事で不愉快であったが、追放の衆議の圧迫に負けてしまってとうとう入院させて手術を受けさせた。
手術後目立っておとなしく上品にはなったが、なんとなく影の薄い存在となったようである。それからまもなくある日縁側で倒れて気息の絶え絶えになっているのを発見して水やまたたびを飲ませたら一時は回復した。しかしそれから二三日とたたないある朝、庭の青草の上に長く冷たくなっているのを子供が見つけて来て報告した。その日自分は感冒で発熱して寝ていたが、その死骸《しがい》をわざわざ見る気がしなかったから、ただそのままに裏の桃の木の根方に埋めさせた。目で見なかった代わりに、自分の想像のカンバスの上には、美しい青草の毛氈《もうせん》の上に安らかに長く手足を延ばして寝てい
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