間と少しも変わらないものになってしまっている。口もきけば物もいう。こちらの心もそのままによく通ずる。そうして死んだ人間の追憶には美しさの中にも何かしら多少の苦《にが》みを伴なわない事はまれであるのに、これらの家畜の思い出にはいささかも苦々《にがにが》しさのあと味がない。それはやはり彼らが生きている間に物を言わなかったためであろう。

     猫の死

「玉《たま》」は黄色に褐色《かっしょく》の虎斑《とらふ》をもった雄猫であった。粗野にして滑稽《こっけい》なる相貌《そうぼう》をもち、遅鈍にして大食であり、あらゆるデリカシーというものを完全に欠如した性格であった。従って家内じゅうのだれにも格別に愛せられなかった。小さい時分は一家じゅうの寵児《ちょうじ》である「三毛《みけ》」の遊戯の相手としての「道化師《クラウン》」として存在の意義を認められていたのが、三毛も玉も年を取って、もうそう活発な遊戯を演ずる事がなくなってからは、彼は全く用のない冗員として取り扱われていた。もちろんそれに不平らしい顔もなく、空々寂々として天命を楽しんでいるかのようにも思われた。
 ただ一つ困った事にはこの僧侶《そう
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