見て比較的きれいで品の悪くないものである。だんだん西洋音楽の普及するに従ってこの仕事に対する要求が増加するので、従業者の数もこれに応じて増加しつつあるにかかわらず、いつも商売が忙しそうである。
ピアノでもすえてあろうという室ならばたいていあまり不愉快でないだけの部屋《へや》ではあるだろうと思う。そうして応接する人間もたぶんはそれほど無作法に無礼でもなさそうに想像される。
たくさんな弦線の少しずつ調子の狂ったのを、一定の方式に従って順々に調節して行く。鍵盤《けんばん》のアクションのぐあいの悪いのを一つ一つたんねんに検査して行く。これは見ていても気持ちのいいものである。かゆい所をかくに類した感じがある。すっかり調律を終わってから、塵埃《じんあい》を払い、ふたをして、念のために音階とコードをたたいてみていよいよこれで仕事を果たしたという瞬間はやはり悪い気持ちはしないであろうと想像される。
夏目先生の「草枕《くさまくら》」の主人公である、あの画家のような心の目をもった調律師になって、旅から旅へと日本国じゅうを回って歩いたらおもしろかろうと考えてみた事もある。
狂ったピアノのように狂って
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