」は小さき山脈[#「小さき山脈」に傍点]。
和喰《ワジキ》 「ワシ」波浪[#「波浪」に傍点]「ケプ」破れる[#「破れる」に傍点]。また「ケ」場所[#「場所」に傍点]。
奴田《ヌータ》 「ヌ※[#小書き半濁点付き片仮名フ、1−6−88]」頂の平たき山[#「頂の平たき山」に傍点]「タプ」円頂丘[#「円頂丘」に傍点]。
日下《クサカ》 「クサハ」河を渡船で渡る[#「河を渡船で渡る」に傍点]。勿論土佐の日下は山地である、人名等より来たであろうが、もとは渡しかもしれぬ、崇神紀《すじんき》に「クスハノワタシ」というのがある。
十市《トーチ》 「トンチ」穴[#「穴」に傍点](十市には鍾乳洞がある)。また「トツエ」は沼の潰れし処[#「沼の潰れし処」に傍点]。またチャム「ト」は中央[#「中央」に傍点]「テ」は場所。十市の地名は記紀にもある。
穴内《アナナイ》 「オンネナイ」は大川[#「大川」に傍点]。しかしまたチャム語でも「ナイ」は河[#「河」に傍点]または河辺の野[#「河辺の野」に傍点]であり、アイヌやサモア、マオリ語でも「アナ」は穴[#「穴」に傍点]でもある。
戸波《ヘハ》 「ペッパロ」は川口[#「川口」に傍点]。またモン語で「ウェア」は平原[#「平原」に傍点]。
大西 「オニウシ」大きな森[#「大きな森」に傍点]。
奈路《ナロ》 この地名は土佐各所の山中にある。アイヌで「ノル」は熊の足跡[#「熊の足跡」に傍点]であるが、ことによると「ナ」河流[#「河流」に傍点]と「ロロ」または「ロッ」上座[#「上座」に傍点]の義かもしれぬ。この地名は大抵河の畔《ほとり》にあるから。また朝鮮で「ナル」は山であるがこれであるかもしれない。
御畳瀬《ミマセ》 「ピパ」牡蠣の種類[#「牡蠣の種類」に傍点]。「シ」は在所[#「在所」に傍点]。「セッ」巣[#「巣」に傍点]。北海道に地名ビバウシがある、バチェラーはやはり「貝のある所」と解している。bがmに変るのは普通だからこれは同じものらしい。
仁淀《ニヨド》 坪井博士はチャム語「ニオト」塩魚[#「塩魚」に傍点]、塩肉[#「塩肉」に傍点]としている。ビルマ「ニアジヨーク」も干魚[#「干魚」に傍点]である。しかしアイヌとすれば「ニ」樹木[#「樹木」に傍点]「オロ」豊富[#「豊富」に傍点]。またマレイ「ニアタ」は用材樹木[#「用材樹木」に傍点]。仁淀川と塩魚は縁が薄いが材木とは縁が深い。
越知《オチ》 「オチ」は水の渦を巻く[#「水の渦を巻く」に傍点]義。
手結《テイ》 「タイ」森[#「森」に傍点]。これではないらしい。あるいは「ツイ」切れる[#「切れる」に傍点]か。ビルマでは「テー」砂[#「砂」に傍点]。出雲の手結[#「手結」に傍点](タユイ)とは必ずしも同じではないかもしれぬ。
津呂《ツロ》 「ツル」は突き出る[#「突き出る」に傍点]。二箇所の津呂いずれも国の突端に近い。(長津呂のツロも同じか。)
以布利《イブリ》 バタク語で「イフル」は前同様突端でこれが津呂に近くあるのは面白い。
足褶《アシズリ》 「アツイ」海[#「海」に傍点]「ツリ」突出[#「突出」に傍点]。すなわち海中に突き出る義か。
安和《アワ》 「アパ」入口[#「入口」に傍点]。または海上より見た河口[#「海上より見た河口」に傍点]。阿波国名もあるいは同じか。
五百蔵《イオロイ》 「イウォロ」山[#「山」に傍点]。
斗賀野《トガノ》 「ツク」上方に拡がる[#「上方に拡がる」に傍点]「ヌ※[#小書き半濁点付き片仮名フ、1−6−88]平原丘[#「平原丘」に傍点]。
四万十《シマント》川 「シ」甚だ[#「甚だ」に傍点]。「マムタ」美しき[#「美しき」に傍点]。
布師田《ヌノシダ》 北海道に「ヌ※[#小書き半濁点付き片仮名フ、1−6−88]ノユシ」の地名がある。蓬野[#「蓬野」に傍点]の義である。
伊尾木《イオキ》 「イオチ」は蛇の居る[#「蛇の居る」に傍点]であるか。またセマング語で「イオ」は森[#「森」に傍点]、「クイン」は樹[#「樹」に傍点]である。伊与木も伊尾木も多分同じものか。フィン語の「ヨキ」は川[#「川」に傍点]である。
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あるいはアイヌ「イオク」釣針で捕る[#「釣針で捕る」に傍点]すなわち釣魚の義か。サカイ語では「カドー」でこれが門谷のカドに関係するかもしれない。
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土佐 門狭《とさ》ですなわち佐渡の狭門《さど》に同じく狭い海峡をはいって行く国だとの説がある。しかしアイヌで「ツサ」は袖の義である。土佐の海岸どこに立って見ても東西に陸地が両袖を拡げたようになっているから、この附会は附会として興味がある。もしこれがアイヌだとすると、隣国|讃岐《さぬき》は「サンノッ
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