さて、その講評の日に、順次に他の問題について説明された後に、この半陰影の問題に移った。「諸君の中にこういうことを書いた人がある」と言って、自分の提出した答案の所説を述べ、「これは、なかなかうまい説明であると思う。が」と言ってちらりと自分のほうを見ながら、にこにこして「しかし、惜しい事には……」と言ってその似而非《えせ》説明《せつめい》の大きなごまかしの穴を指摘しておいて、さて、丁寧に先生の本物の説明を展開するのであった。自分はすっかり赤面し恐縮してしまった。三十余年後の今日でもはっきりその時の事を覚えているくらい恥ずかしかったのである。先生もなかなか人の悪いところがあったという気がする。もっとも相手はやっと二十歳の子供であったのだから、ちょっとからかってみる気にもなられたものであろう。
先生に三角を教わり力学を教わったために、始めて数学というものがおもしろいものだということが少しばかりわかって来た。中学で教わった数学は、三角でも代数でも、いったいどこがおもしろいのかちっともわからなかったが、田丸先生に教わってみると中学で習ったものとはまるでちがったもののように思われて来た。先生に言わ
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