いると考えるのである。
日本における特異の気象現象中でも最も著しいものは台風であろう。これも日本の特殊な地理的位置に付帯した現象である。「野分《のわき》」「二百十日」こういう言葉も外国人にとっては空虚なただの言葉として響くだけであろう。
気候の次に重要なものは土地の起伏水陸の交錯による地形的地理的要素である。
日本の島環の成因についてはいろいろの学説がある。しかし日本の土地が言わば大陸の辺縁のもみ砕かれた破片であることには疑いないようである。このことは日本の地質構造、従ってそれに支配され影響された地形的構造の複雑多様なこと、錯雑の規模の細かいことと密接に連関している。実際日本の地質図を開いてそのいろいろの色彩に染め分けられたモザイックを、多くの他の大陸的国土の同尺度のそれと見比べてみてもこの特徴は想像するに難くない。このような地質的多様性はそれを生じた地殻運動《ちかくうんどう》のためにも、また地質の相違による二次的原因からも、きわめて複雑な地形の分布、水陸の交錯を生み出した、その上にこうした土地に固有な火山現象の頻出《ひんしゅつ》がさらにいっそうその変化に特有な異彩を添えたようで
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