りまた世界人類の健全な進歩への寄与であろうと思うものである。世界から桜の花が消えてしまえば世界はやはりそれだけさびしくなるのである。
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(追記) 以上執筆中雑誌「文学」の八月特集号「自然の文学」が刊行された。その中には、日本の文学と日本の自然との関係が各方面の諸家によって詳細に論述されている。読者はそれらの有益な所説を参照されたい。またその巻頭に掲載された和辻哲郎《わつじてつろう》氏の「風土の現象」と題する所説と、それを序編とする同氏の近刊著書「風土」における最も独創的な全機的自然観を参照されたい。自分の上述の所説の中には和辻氏の従来すでに発表された自然と人間との関係についての多くの所論に影響されたと思われる点が少なくない。また友人|小宮豊隆《こみやとよたか》・安倍能成《あべよししげ》両氏の著書から暗示を受けた点も多いように思われるのである。
なお拙著「蒸発皿《じょうはつざら》」に収められた俳諧《はいかい》や連句に関する所説や、「螢光板《けいこうばん》」の中の天災に関する諸編をも参照さるれば大幸である。
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