散と比べてはなはだしく幾重にも複雑な方則に支配されるであろうし、拡散する「物」の安定度《スタビリティ》が少ないために、事がらがいっそう込み入って来るのであろう。
 以上は畢竟《ひっきょう》一つの空想に過ぎない。ただ、近来わが国固有文化に関する研究が急激に盛んになって来たのに気がついて、愉快に感じると同時に自分も知らず知らずその趨勢《すうせい》に刺激されて、つい柄《がら》にない方面にまで空想の翼を延ばしたくなったようなわけである。杜撰《ずざん》な考証に対してもし識者の教えを受ける縁ともならば大幸である。
(お断わり。楽器の名のかな書きに直し方に不穏当なのがあるかもしれない。どうかそのつもりで読んでもらいたい。)
[#地から3字上げ](昭和三年一月、大阪朝日新聞)



底本:「寺田寅彦随筆集 第二巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1947(昭和22)年9月10日第1刷発行
   1964(昭和39)年1月16日第22刷改版発行
   1997(平成9)年5月6日第70刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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