も同じ時にはおのずから一定の統計的平均の形を示すのである。この合流の統計的方則が何であるか、これを支配する物理的与件が何と何とであるか、これも直ちに発せられる疑問である。ガラスの面の一部を石鹸《せっけん》でこすっておくと、そこだけはこの水滴の凝結に対してまた全くちがった作用をするのである。
ガラス面に水滴の着く事に関してはいわゆる「呼気像」(Hauchbild, breath figure)の問題として従来多少の研究があった。特に近来の表面化学の進歩につれてかなりまで解答の糸口が得られかかったようではある。しかし具体的の諸問題について追究すべき事がらはまだ非常に多い。私の洗面所の問題のごときもその一つであると思われる。
水滴の合流するしかたの統計的方則に関しては現在の物理学はほとんど無能に近いと言っても過言ではない。これに類する多くの問題は至るところに散在している。たとえば本誌(科学)の当号に掲載された田口※[#「さんずい+卯」、第4水準2−78−35]三郎《たぐちりゅうざぶろう》氏の「割れ目」の分布の問題、リヒテンベルク放電像の不思議な形態の問題、落下する液滴の分裂の問題、金米糖
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